トロントリールアジアン映画祭オープニング上映に『幼な子われらに生まれ』を招いていただきありがとうございます。
300人以上の会場が満席となっていてとても光栄に思いました。
Q&Aはとても深い話で幸せでした。
その後もドイツの監督、アメリカのドキュメントの監督、ギリシャのお客さん、トロントのみなさま、たくさんの方が、感想を言いに来てくれ、この映画について、ずっと語っていただけることが、ほんとに幸せです。
◯3人の子役がすばらしかったが、どんな演出をしたのか?
◯一人カラオケがすごく面白かったが、日本ではポプュラーか?
◯血の繋がりを重んじる日本でなぜこの作品を作ろうと思ったのか
◯お父さん、と呼ばせることについて、なぜそんなに執拗になるのか。
などなど。
あとは基本的に以下の質問。とても充実した時間でした。
1. What motivated you to tell this story?
(この話を映画にしようとした動機は?)
動機は3つあります。
ひとつには、自分自身父を亡くし、自分のルーツである大阪の実家もなくなり、血についてそして家族について考えていたこと。
二つ目に、現代の日本が、離婚率も増え、再婚率も増え、外国の方がたくさん日本で暮らすようになって、血の繋がり以外のつながりを見直す時期に来ていると感じていたこと。
三つ目に、他者と出会い、他者とぶつかるたびに自己の本質が見えてくる、そんな作品を作りたいと考えていたこと。
この3つのエッセンスが、この物語にはありました。
2. What can a man do to be a “good father”? And woman be to be a “good mother”?
(良き父、良き母になる要素は何でしょう
わかりません。私自身子育てをしてないので。
良き母とは、良き父とは、の正解は永遠に見つからないのかなと想像します。正解が見つけられたと思っても、それは正解かどうかわかりません。
ただ、正解を見つけようとあきらめずに向き合う覚悟がある、ということかなと思います。
性別関係なく父性とは?と問われたら、
父性とは、「自分が構築した尺度を示すこと」
母性とは?と問われたら、
「無償の愛」と位置づけています。
3. In Japan there have been many tumultuous events in its history of being up-rooted and so-forth. Are “complicated family units” more acceptable now in Japan than previously?
(日本の歴史上では血を絶やすとか家督を継続する事が大きな問題として取り上げられる事が多いですが、「複雑な家庭」は近年受け入れられる様になっているのでしょうか?)
日本では
血は水よりも濃い、という言葉があります。
血の繋がった血縁者の絆は、どんなに深い他人との関係よりも深く強いものであるというたとえです。
ですが、離婚率も再婚率も増加した日本では、変化を余儀なくされてきていると感じます。でも一方で、血にこだわる流れも感じます。
日本人という血、家族の血縁のつながりへの強いこだわりは、時に疎外感を生む時があり、恐怖すら感じる時があります。
自分個人は、水は血よりも濃い、と思うことが多くありますし、もっと〝個人〝に向き合うべき時が来ているのではないかと考えます。
タイトルにもETRANGERと入れましたが、
血が繋がろうと繋がらなくても
《自己》以外はみな《他者》であり、
《自己》と《他者》との化学反応こそが、
生きていくことなのではないかと感じています。
4. How did audiences in Japan and internationally react to this film?
(日本及び海外の観客の反応は?)
信じる(believe)と書いてまこと(truth)という名前の主人公は一度失敗したことから、家族を最優先させるスタイルで生きている。
生活することが第一の専業主婦の奈苗、
非日常を求めてしまう奈苗の元夫の沢田、
仕事第一でやってきた信の元妻の友佳、
初潮を迎え、母親の妊娠に敏感になり、父親への愛憎が爆発する長女の薫、、、、
それぞれのお客様がそれぞれに共感したり寄り添いいろんなことを感じてくださいました。
なかでも多かったのは、
「血のつながらない家族を描きながら、
普遍的な家族のテーマが浮き彫りとなり、個人と他者、自己の本質、パートナー、家族などについて考えたと」という感想でした。
5. How long did this take from script to finished film?
(脚本から映画の完成までどれくらい長くかかりましたか?)
脚本との出会いから資金を集めて、キャスティングして、、、と六年間の時間がかかりました。
6. Any difficulties in production along the way?
(完成に至るまでの苦労は?)
地味なお話なので、
なかなか企画として通りませんでした。
なので、脚本家の荒井さんと一緒に
とにかく賛同者をひとりひとり集めて、
資金も集めてということを
時間をかけて地道に続けました。
内容に関しては、
大きな出来事がないなかで、
ある家族のある一時(いっとき)の風景を記録する。つまり、実際の家族を観ているような感覚で観てもらいたいと思いました。
演技に見えないリアリティーの追求を
一番に心がけました。
7. What advice do you have for aspiring film makers?
(映画製作を夢見ている人たちにアドバイスするとしたら?)
これから、もしかしたら非常に映画づくりのしにくさを感じる時が来るかもしれません。クリエイターにとって自由であることは最大の喜びですが、そんな位置にいけたり、そんな状況を目指すとしても、大きな不自由さの中で表現しなければいけないことが増えるかもしれません。
ですが、先人たちがそうしてきたように、何かしらの風穴をあけることは人間にはできるという可能性を信じています。例えばジャファル・パナヒ監督の『Taxi』のように。
どんな状況でも、発信し続けることが映画表現者なのかなと、自分自身もいつも、叱咤しております。
8. What’s your next project?
(次回作は?)
歌というエンターテイメントを織り交ぜながら、
過酷な人生を生き抜く女性の物語を企画しています。生きづらい時代になりかもしれません。だからこそ、「風と共に去りぬ」の日本の女性版を歌のエンターテイメント映画として作りたいと思っています。
thanks a lot.
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